DXとは/DXの定義
DXという言葉を聞いてどんなことを思い浮かべますでしょうか?「ペーパーレス」や「電子化」、「会議や営業活動のオンライン化」「AIの活用」など思い浮かべる方も多いと思います。今回は、DXについてまだよくわからない方向けに説明していきたいと思います。
DXに関するデータ
まず、DXの認知やどのくらいの人が理解しているか等を説明致します。
引用:Googleトレンド
Googleトレンドというツールを活用するとトレンドに関するデータを抽出することができます。Googleトレンドで「DX」を見てみると、2022年3月頃から急激に伸びていることがわかります。ちょうどコロナウイルスの最初の緊急事態宣言が発令されたあたりからDXを検索する人が伸びているように解釈できます。
引用:中小機構:中小企業の DX推進に関する調査(n=1000)
次は、中小機構が実施した調査を元に見ていきます。「DXに対する理解度」では、DXを理解している企業は全体の7.8%しかいないことがわかります。「DX推進に向けた取り組みの必要性」では、76.2%もの企業がDXが必要という認識でいることがわかります。まとめると、DXについて理解していないけど、DXをしなければいけないと思っている企業が多いという調査結果になります。
引用:中小機構:中小企業の DX推進に関する調査(n=1000)
「DXに期待する成果・効果」では、「業務の効率化」「コストの削減」を期待している企業が多いように見えます。「DXの取り組み状況」を見ると、すでにDXに取り組んでいる企業は7.9%しかいないことがわかります。
引用:中小機構:中小企業の DX推進に関する調査
「DXの具体的か取り組み内容」では、「HPの作成」「営業活動・会議のオンライン化」「顧客データの一元管理」が上位に位置しています。「DXに取り組むにあたっての課題」では、「人材不足」や「企業風土がない」「成果が見えない」というような課題を感じている企業が多いようです。こちらをまとめると、具体的なDX施策は考えているけど、実践する人材やサポートしてくれる企業風土がない ということがわかります。
結局DXの定義ってなんですか?って思う方もいらっしゃるかと思うので、説明致します。
経済産業省が提唱するDXの定義
DXは、本来、データやデジタル技術を使って、顧客視点で新たな価値を創出していくことである。そのために、ビジネスモデルや企業文化などの変革が求められる。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用:経済産業省
エリック・ストルターマンが提唱する定義
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義し、下記の特徴を提示している。
- デジタルトランスフォーメーションにより、情報技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる。
- デジタルオブジェクトが物理的現実の基本的な素材になる。例えば、設計されたオブジェクトが、人間が自分の環境や行動の変化についてネットワークを介して知らせる能力を持つ。
- 固有の課題として、今日の情報システム研究者が、より本質的な情報技術研究のためのアプローチ、方法、技術を開発する必要がある。
引用:Wikipedia / スウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン(Information
Technology and the Good Life)
経産省が提唱するDXは、ビジネス寄りな定義に対して、エリック・ストルターマンはより広義で生活をより良い方向に変化させるという意味でDXという言葉を使っているのが印象的です。
ただ、DXは手段であり、目的ではなく、あくまで製品やサービス向上が目的であり、効果が見えないのに行うIT施策はDXではないということになります。DXは、企業が生存・成長するために必要な経営戦略に近いものだと思います。
DXはなぜ必要か
経済産業省が提唱している「2025年の崖」という言葉はご存じでしょうか?
「2025年の崖」とは、DXが推進されなければ、負のサイクルが進み、2025年以降現在の約3倍にあたる最大年間12兆円もの経済損失が生じる可能性があると言われています。
負のサイクルについて詳しく説明すると、世の中のテクノロジーの発展が進み「市場のデジタル化」が進みます。デジタル化が進むと、現状でも課題になっている「エンジニア不足」がさらに顕在化していきます。エンジニア不足が加速すると、新しいシステムにアップデートできない企業のシステムの「レガシーシステム化(老朽化・肥大化)」が進行します。レガシーシステムがそのまま運用されていると、新しいアプリケーションやOSのサポート対象から外れてしまいそもそも利用できなくなってしまうシステムが増えていきます。これが負のスパイラルです。
引用:経済産業省
少子高齢化による生産年齢人口不足と、デジタルを活用したWithコロナ施策が実行できる企業との格差が広がる
コロナ禍でも着実に売上を伸ばしている企業はたくさんあります。コロナウイルスの流行により、時代に合わせた製品・サービスに改変できる企業とそうでない企業との差が明確になりつつあります。ホテル・旅館においてもサブスクプランや、サウナの導入、ワークスペースの確保、ワーケーションプランの販売等を行い時代に合わせたサービスの提供を実施しているホテル・旅館は売上を伸ばしています。
ホテル・旅館がDXを行うために必要な4つのポイント
次に何をすればDXを実現できるかについて説明します。私が考えるに大切なポイントは以下の4つです。
- 情報収集(他業界のDX事例/競合調査/新しいテクノロジー)
- 理想の顧客体験を考え、構想する
- 組織システムの見直し
- IT人材の確保・育成
1. 情報収集(他業界のDX事例/競合調査/新しいテクノロジー)
ベースとなり、一番大切なことは情報取集だと思います。同じ業界のことはもちろん、他業界のDX事例に目を向けたり、ブロックチェーン・NFT・AR/VRのような新しい技術に関する情報を積極的にキャッチアップすることが大切だと思います。
新しい技術に関しては、「NFT x ホテル・旅館」「ブロックチェーン・ホテル・旅館」「AR/VR x ホテル・旅館」というような掛け算によって、どんなユーザーに価値のあるものができるだろうかと考え・妄想することから新しいサービスが生まれると思います。
2. 理想の顧客体験を考え、構想する
ホテル・旅館では、「旅ナカ」にとどまるかもしれませんが、宿泊・観光業界においては、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」でどんな顧客体験を提供するかを考えるのをおすすめします。さらにいうと、「旅マエ」の前や「旅アト」の後である日常生活に如何に接点を持つのかを考えるのが大切だと思います。
さらには、「旅ナカ」においても、自宅からホテルまでの道のり、現地に到着してからホテルにチェックインするまでの時間、チェックイン後にホテル・旅館周辺を楽しむコンテンツ、チェックアウト後の過ごし方等、さまざまなユーザー体験を如何に充実したものとさせるか、充実させるためにどんな仕組み・システム・サービスが必要かを構想し、それに合わせてサービスのブラッシュアップ、システムの改修等を行うことがDXにつながると思っています。
3. 組織システムに見直し・構築
DXに必要なポイント2つ目は、DXを推進するための経営方針や組織構造の改革が必要になります。DXの取り組みは、定着するまで継続しないといけません。そのため、現場と現場以外の連携やコミュニケーションも重要となります。
4. IT人材の確保・育成
DXを推進するために、デジタルに詳しいIT人材・パートナーの存在は不可欠です。ただ、世の中はIT人材が不足しているため、採用するハードルも高いです。立ち上げなど運用を一部、パートナーとしてIT企業に委託することも手段としてはありですが、委託費用は安くはありません。
可能であれば、DXチームとして社内で人材も必要になるため、他の部署の人材をIT人材として育成するということも一つの手段になります。
星のリゾートでは、現場スタッフ含め、全社員のIT人材化を目指しるようです。このような取り組みは観光・宿泊業界問わず加速していくと思います。
【前編】「現場スタッフ含め、全社員IT人材化を目指す」星野リゾートのDX推進・デジタル化の取り組み
小さくスタートできるDXサービスの紹介
組織の見直し、IT人材の確保などはすぐにできることではないため、簡単に始めれるDXツールについて紹介します。ツールに導入の前に、すぐ始めることができる、前述した「理想の顧客体験を考え、構想する」についてぜひ進めてみてください。
Google系のサービス
Googleでは、さまざまな便利なツールを無料で提供しており、どのツールも使いやすいためスモールDXにおすすめです。
- Google Sheet:エクセルで管理していたファイルをオンライン管理におすすめです
- Google Drive:USBで管理していたファイルをGoogleドライブでクラウド管理ができます
- Google Calendar:アナログ管理だった予定をGoogleカレンダーで管理できます
- Google Analytics:WEBサイトにGoogleアナリティクスを導入してWEBサイトの分析ができます
- Google Search Console:WEBサイトにどのような検索キーワードで流入しているかを分析できます
とくに最後に記述したGoogle AnalyticsとGoogle Search Consoleは公式HPや予約システムに導入をおすすめします。Analyticsではサイトに訪れている人の年齢・性別・地域等がわかり、自社のWEBサイトはどんな人が見ているのかがわかったり、ページごとの表示回数等がわかるので、どんなプランが見られているのかなどがわかるため、改善のヒントを見つけることができます。個人的には、検索キーワードはインサイトの宝庫だと思っているため、Search Consoleを活用しWEBサイトにどんなキーワードで流入しているか、検索順位は何位かを把握できることは事業運営のヒントにつながると思います。
その他のツール
その他、IT企業を中心によく使われているツールを紹介します。
- Slack:グループチャットツールSlackを活用した社内連絡が円滑になります
- ZOOM:対面で行っていた商談をオンライン会議に変更できます
- Shopify:受付で販売していたグッズをShopifyを活用してオンライン販売ができます
- Notion:メモや社内報として活用できます
ホテル・旅館における今後の見立て
最後に、ホテル・旅館、観光・宿泊業界における私なりの見解を書いていきます。少しでもDX推進・経営のヒントになれば幸いです。
インバウンド需要回復に合わせた施策の必要性
数年後に復活するインバウンドが完全に回復した後の世の中では、多言語対応をベースとした+αの施策が必要になってくると思います。
長期滞在やサードプレイスとしてのホテルのあり方
コロナ禍でリモートワークが定着し、サードプレイスとしてのホテルのあり方などが今後も求められると思います。長期滞在が増えることで、ホテル滞在を楽しむというより、ホテルを拠点として周辺の体験・アクティビティを楽しみたいというような利用者も増えてくると思います。さらには、海外からもサードプレイスとしてホテル・旅館を利用する人も増えていくと思います。
DXが進み便利になった世の中でのおもてなしの再定義
ITツールやDXを推進するための便利ツールが導入されるとユーザーの利便性や運営のコストも削減されていくと思います。ただし、便利になっただけでは思い出に残る体験にはならないと思います。そのために、「ハートウォーミング」や「人と人とのつながり」などを意識したDXが進んだとの中での「おもてなし」の再定義は必要になってくると思います。
システム運用・マーケティングの内製化
星のリゾート様のように、DXの必要課題である組織変革が進み、システム運用やマーケティングの内製化を進める企業が増えていくため、組織体制を整えることができる企業とそうでない企業の差が広がっていきます。なぜ内製化が必要かというと、HPも予約システムもシステムを公開するのがゴールではなく、ユーザーが求めている機能や時代要件に併せて育てていくものです。育てるためには、臨機応変にシステム等の改善やマーケティングを推進するチームが必要不可欠になります。
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