観光業界以外で注目されはじめているD2Cというビジネスモデル
D2Cとは、「Direct to Consumer」の略語で、製造者がダイレクトに消費者(エンドユーザー)と取引をするという意味になります。D2Cは、企業が企業に商品・サービスを提供する「B2B(Business to Business)」や企業が消費者(エンドユーザー)に商品・サービスを提供する「B2C」などと比較される言葉としてよく目にするようになりました。最近出てきた言葉に見えますが、D2Cは2000年代後半辺りから米国のスタートアップ企業を中心に発展しはじめたビジネスモデルです。
D2Cという言葉が使われるきっかけとなったのがShopifyの存在が大きいです。Shopifyは、誰でも簡単にECサイトを構築・販売ができるツールです。弊社でもShopifyの開発を何度かしましたが、エンジニア以外でも使いやすいツールになっており、特に越境EC、クオリティの高いデザイン、連携アプリの充実が利用者が多い要因になっていると思います。
エンジニアが手を加えることでたくさんのことが実現できるようにAPI(Store Front API)等も準備されており、素晴らしいサービスだと思います。Shopifyが使われるようになってきて、メガネを販売するWarby Parkerやベッドを販売するCasper等のユニコーン企業が増えて、D2C型のビジネスモデルをはじめる企業が増えていきました。
参考:
https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/d2chttps://precs.jp/blog/?p=16280
D2Cのメリットとデメリット
D2Cの概要は理解いただけましたでしょうか?次は、D2C型のビジネスモデルのメリットとデメリットについて説明します。
D2Cのメリット
①減価率を抑えることができて、収益性が高い
問屋や中間業者の手数料等や、ECでいうとAmazonや楽天などの販売手数料がなくなるため、収益性が高くなることはメリットになります。
②お客様と直接コミュニケーションを取ることができる
今まで中間業者が行っていたお客様とのやり取りを直接行うことができるようになることで、お客様からのフィードバックをもらいやすくなります。お客様のフィードバックをもとに商品・サービスの改善をしやすくなり、より商品やブランドの価値を高めることができます。
③顧客のデータを蓄積し、次の施策を打ちやすい
お客様の購買データや属性等を把握できるため、自社の商品・サービスがどんな人に求められていて、どんなニーズを解決しているかがわかりやすくなるため、②と同様に自社の商品やブランドの価値を高めることができたり、新商品の開発など新しい施策を打ちやすくなります。
D2Cのデメリット
①初期コストが発生する
ECにおいてD2C型ビジネスを始めるにあたりまず必要になるのが、自社商品のECサイトです。BaseやStoresなど簡単に独自のショップを始めることができるツールはありますが、できれば売上に対して販売手数料のかからないツールを利用したいと思う方も少なくないと思います。
そうなってくると使えるツールは限られてきて、Shopifyなどを使ったり、開発会社の手を借りてEC CUBEなどを利用して独自のECシステムを構築することになります。そのような初期費用がかかってくるのがデメリットになると思います。
②認知されるためのアクションが必要
D2C型ビジネスで必要になってくるのがマーケティングです。すでにInstagram等のSNSで多くのフォロワーを獲得していたり、独自の顧客リスト等を持っている事業者様であればD2Cは始めやすいですが、SNSの運用や顧客リストがまだない事業者様はゼロからマーケティングをはじめることになります。そのようなマーケティングコストがかかる点はデメリットになると思います。
③収益化まで時間を要する
①と②で説明しましたように、ECサイトの構築、顧客リスト集めをゼロからスタートする場合は、初期開発や準備にかけたコストを回収し、収益化するまでは時間が必要になります。その点はデメリットになるかと思います。
宿泊・観光業界/ホテル・旅館のD2Cとは
さて、ECにおいてのD2Cの説明をしましたが、ここからは宿泊・観光業界/ホテル・旅館におけるD2Cについて説明します。
OTAやサイトコントローラーに頼らず、宿泊施設事業者がマーケティング、予約管理を行い、直販比率を増やすこと
宿泊施設事業者の方がD2Cを行うということは、「OTAやサイトコントローラーに頼らず、宿泊施設事業者がマーケティング、予約管理を行い、直販比率を増やすこと」になると思います。ただ、突然接続しているOTAやサイトコンローラーを切断することはハイリスクな行為だと思っています。OTAやサイトコントローラーに頼りつつ、できる限り直販比率を増やすことをお勧めします。
ホテル・旅館の直販比率の増やし方
次に、ホテル・旅館の直販比率の増やし方について他業界のナレッジを踏まえながら説明します。直販比率を上げるためのポイントは以下になります。考えた方的にはECと同じ考え方になります。
ECサイト運営で大切な指標
①集客
一番大切な指標は「集客」です。「集客」とはECサイトに訪れる人・回数を増やすことです。集客を増やす方法はいくつかありますが、自社でできることは以下3つです。
- Google/Yahooなどの検索エンジンから集客する
- SNSから集客する
- 広告出稿し、集客する
それぞれ簡単に説明していきます。(詳しくは別記事で書きます)1つ目の「Google/Yahooなどの検索エンジンから集客する」は、ユーザーがGoogle/Yahooなどの検索エンジンでキーワードを入れて検索した時に、検索結果に表示された自社のサイトをクリックすることで集客する方法になります。検索結果に表示されるような取り組みを「SEO」と言われます。SEOで獲得するためには、”ユーザーの課題を解決するコンテンツ(記事)”があること前提となります。ただし、Google/Yahaooのロボット(クローラー)がサイトを評価し、検索順位を決めるため昔と違いクローラーのロジックが発達したため、記事を増やしたからといって順位が上がるという簡単なものではなくなったため、それなりの知識が必要です。
2つ目の「SNSから集客する」は、Instagram/Facebook/Twitter等のSNS経由でサイトに集客する方法になります。SNSからの集客数を増やすためには、フォロワーを増やしたり、他のユーザーに自社の商品を取り上げてもらうことで集客できる数がアップします。
3つ目の「広告出稿し、集客する」は、Google/Yahooの検索結果に広告を出したり、メルマガ広告を出すことで集客につなげる方法です。こちらもある程度の専門知識が必要な方法になります。(詳細は別記事で書きます)
②CVR
CVRとは、サイトに訪問し、商品を購入した割合のことです。①で集客しても購入者が増えないと意味がありませんので、ユーザーが買いたいと思う商品だったり、購入しやすいサイトにすることで向上を図ることができます。
③リピート
リピートは、言葉の通りでサイトに再訪問してくれたり、1度購入したユーザーが再度購入する人を増やすということです。いい商品であれば再度購入してくれる人も増えてくるため、広告費等の①にかける費用を抑えることができます。
④客単価
最後に大切な指標が、「客単価」です。客単価を高める方法は、そもそもの商品の単価を上げることが考えられますが、市場価格にくらべてあまりに金額が高いと②のCVRが下がってしまったりするためバランスを考える必要があります。ただし、客単価を上げる方法として「アップセル」を促進する方法は検討する必要があります。アップセルとは、1商品買った場合に他にも何商品か同時に購入してもらうという考え方で、「2点以上送料無料」「3点購入で10%オフ」というような複数購入特典を準備することで客単価アップにつなげることができます。
ホテル・旅館における大切な指標
①ターゲットを明確にする
自社の宿泊施設が実際にどんな人に使って欲しいか、現状どんな人たちが利用しているかを明確にする必要があります。全ての人に喜ばれる宿は存在しますが、ビジネス利用なのかファミリー利用なのかで詳細のサービスは変わってくると思います。
すでにサイト等をお持ちの方は、Google AnalyticsとSearch Consoleの導入をお勧めいたします。
Google Analytics:Google社が提供する無料のアクセス解析ツール
Search Console:Google社が提供しているインターネット検索の分析ツール
②公式HPを準備する
ターゲットを明確にしたら、ターゲットに宿の魅力が伝わるHPが必要になります。予約システムとの連携はあった方がいいですが、最低限お問合せフォームがあればいいと思います。
③公式HPへの流入を増やす
準備した公式HPに訪れる人を増やすためには、前述したECサイトの大切な指標①の「集客」と同様に検索やSNS、広告を活用して集客を行います。また、最近ではGoogleでホテルを検索するとホテルのレコメンド機能(Google Travel)があります。無料で公式HPの掲載もできる機能もありますので活用することをお勧めします。
④リピーターを増やす
ホテル・旅館においてリピーターを増やすためには、ポイントシステムの導入や会員システム等による会員限定特典を作成すことでリピート促進はできますが、大切なのは満足度の高い滞在体験だと思います。レビュー機能等があることにより、顧客の声を集めることができ、サービスの改善に活用できます。
⑤客単価を増やす
ホテル・旅館においても客単価が高めることは大切になります。ホテル・旅館において客単価を上げる方法もいくつか考えられますが、わかりやすい例で言うと、「朝食」「夕食」等の食事オプションや、滞在中に参加できる体験・アクティビティをセット売りすることは客単価向上につながると考えられます。
直販比率をアップする予約システム「Jammy(ジャミー)」
弊社では、ホテル・旅館・ゲストハウス向けの予約システム「Jammy(ジャミー)」を提供しています。
Jammyでは、直販比率を最大化するための施策・機能を企画・開発を進めております。気になる方はぜひ意見交換させてください。